第15章 崩れゆく嘘[下]
「人を心から愛するということは簡単に出来ることじゃない。その気持ちを大切にしなさい。だが...自分のした事に対する償いは必要だ。フランスへ戻って、罪を償うんだ。お前はまだ若い。きっと...立ち直れるよ」
父親の腕の中で涙を流す璃央の元へと葵が近づくと、ゆっくりと片膝をついた
「璃央様」
「...、葵」
「私は...もう璃央様の傍にいる資格はありません」
穏やかに呟いた声に迷いは無く、その瞳は璃央を真っ直ぐと見つめていた
「...っ」
「璃央様を最後までお守り出来ず、申し訳ございません...。私は...私の罪を償う為に、梨奈様を事故に遭わせた犯人として自首します」
葵の言葉にその場にいる全員が言葉を失った
「旦那様。数々のご無礼を...申し訳ございませんでした。どうか、璃央様の事をお願い...」
「ダメよ!」
璃央の言葉が響き渡る
その声に葵は下げかけた頭を上げた
「葵が私の傍を離れる事は許さない!あなたが自首するって言うなら、私も一緒について行くわ。私を...1人にしないで...」
堪えきれず再び涙が溢れると、璃央はぎゅっと葵の首元に抱きついた
「璃央様...」
「そうだな...。璃央の面倒を見れるのはお前しかいない。フランスに帰ってから璃央には色んな事を勉強してもらわなければならないからな。お前がいなければ、璃央も罪を償いきれないだろう」
「...旦那様」
薄っすらと瞳に涙を滲ませる葵に、璃央の父親は微笑んだ
「これは私からのお願いだ。璃央と私と共に、フランスへ来てくれないか」
葵さんが頷いた瞬間
雨宮君の意識が遠のいていった