第15章 崩れゆく嘘[下]
「...どういう事だ?」
「恵君...。3年前、君を心の底から傷つけたあの出来事は決して不慮の事故ではなかった。私の娘のせいだ...。本当に、すまない...」
恵に向けて頭を下げる璃央の父親の姿に、恵は瞳を揺らした
「3、年前...」
「恵様、梨奈様のあの事故は...偶然ではなかったのです...」
「やめてっ、葵!!」
璃央の声に葵はぐっと眉を寄せると、ゆっくりと口を開いた
「梨奈様の死は...、璃央様の意思で起こった事故なのです」
葵さんから告げられた衝撃的な言葉に雨宮君と私は言葉を失った
雨宮君を支える武本君は顔をしかめ目を伏せる
(璃央ちゃんが...、どうして...)
出血も相まって雨宮君の顔色が青ざめていく
私は、雨宮君の服をそっと掴んだ
「違う...私は...。私が梨奈を殺すわけないじゃない...!」
表情を引き攣らせ首を振る璃央ちゃんの腕を掴んだまま、璃央ちゃんのお父さんがポケットからレコーダーを取り出しボタンを押した
『葵...。私は梨奈を殺すつもりじゃなかったのよ...』
(この声は...璃央ちゃん?)
今より少しだけ幼い璃央ちゃんの声がレコーダーから聞こえてくる
『ただ...許せなかったの。私が欲しいものを何もかも奪っていく梨奈の事が...』
音声を聞きながら、その場にいた誰もが表情を曇らせていく
『私は...恵が欲しかっただけなのに...。最期まで、あの子は自分を犠牲にして...』
辛すぎる現実に、胸が苦しくなって思わず俯いた
閉じた目からじんわりと涙が滲んでくる
『...ほとぼりが冷めるまで、フランスへ戻りましょう。璃央様』
そこで音声は切れた