第15章 崩れゆく嘘[下]
璃央ちゃんは腕を掴む男性を見るなり声を震わせる
手から落ちたナイフが、カランと音を立てた
「...璃央ちゃんの、お父さん?」
呟いた瞬間、私を抱き寄せていた雨宮君の体から力が抜けた
「雨宮君っ!?」
「恵!」
床へとへたり込む雨宮君を支えきれない私の元へ、武本君が駆け寄ってきた
「...駿。お前...」
辛そうに表情を歪める雨宮君に向けて、武本君は穏やかに微笑んだ
「恵、大丈夫。もう...フランスに行かなくてもいいんだ」
「...本当?」
私が目を瞬かせた瞬間、璃央ちゃんの表情が再び変わった
「どうしてっ?この顔の傷はどうするの!?ちゃんと償うって約束をっ...」
「その傷はお前自身がつけた傷なんじゃないのか?そうだろう...葵」
声を荒げた璃央ちゃんとは対照的に、璃央ちゃんのお父さんは穏やかな声のまま葵さんに問い掛けた
「...はい。旦那様」
その問い掛けに葵さんも迷い無く頷く
「顔にそんな傷をつけて人の心を縛り付けようとするなど...不可能だ。お前は彼に、それ以上の傷をつけたのだから...」
「...っ!」
父親の言葉に璃央の表情が強張る
この状況に未だに理解が追いついていない恵は眉を寄せた