第15章 崩れゆく嘘[下]
時刻は10時半
フランス行きのチケットを手に恵は小さく息を吐いた
「恵、そろそろ行きましょう。搭乗口で葵が待ってるわ」
「...ああ」
璃央の声に一瞬目を閉じる
意を決したように前を向きゆっくり立ち上がった瞬間
「雨宮君!」
聞き慣れた声に振り返ると、あゆがこちらへと走ってくるのが見えた
「...っ、あゆ」
近くまで走ってくると膝に手をつき息を整える
そんなあゆの姿を璃央は鋭く睨みつけた
「あなた...何しに来たの?早く帰って!」
冷たく言い放つ璃央の言葉も気にせず、あゆは恵を見つめた
「お願い。雨宮君、行かないで!」
あゆの言葉が真っ直ぐ心に入ってくる
決心したはずの心が揺れる感覚に、恵はぐっと眉を寄せた
「いつも邪魔ばっかり...」
ふいに隣から聞こえた呟きに視線を移すと、怒りに表情を歪めた璃央がポケットからナイフを取り出しあゆに向かって振りかざした
「あなたも梨奈も...目障りなのよ!」
「っ!?」
「あゆッ!!」
振り下ろされる瞬間
あゆは体を強張らせ思い切り目を瞑るも痛みを感じなかった