第15章 崩れゆく嘘[下]
雨宮君がフランスへ出発する当日
私は時計を気にしながらも、自分の部屋から出られずにいた
9時半を指す時計の針を見てあゆは溜息をついた
今日を逃したら...きっと、もう雨宮君には会えない...
苦しくなる胸を押さえながら、私は璃央ちゃんの言葉を思い出していた
“恵は、あなたに出会った事を後悔してるわ”
(私が行っても...雨宮君を困らせてしまうだけかもしれない...)
再び深い溜息が口から出た瞬間、携帯が鳴り響いた
「...咲綺?」
画面に表示された着信相手の名前を見て、通話ボタンを押し急いで耳に当てた
「もしもし...」
『あゆっ、あんた今どこにいるの?』
「自分の部屋に...」
『何してんの!早く空港行かなきゃ雨宮君行っちゃうんだよっ?』
電話越しに聞こえる咲綺の声に携帯を持つ手が震えた
『もう会えないかもしれないんだよ...?会わずに一生後悔してもいいの?』
苦しかったはずの胸の痛みが無くなって、咲綺の言葉が胸にスッと入ってくる
『あゆ!』
「...ありがとう、咲綺。私、行ってくる!」
会っても何も出来ないかもしれない
けど、私は...雨宮君に会いたい
『うん。行ってらっしゃい!』
通話を終えて、私はすぐに家を飛び出した