第14章 崩れゆく嘘[中]
自室の窓から空を見上げていると、愛猫のチビが膝に乗ってきた
「...チビ」
愛らしい瞳で見上げてくるチビの顎下を撫でるとゴロゴロと喉を鳴らす
その様子に璃央は小さく溜息をついた
「璃央様」
不意に聞こえた声に視線を向けると葵がどこか不安げにこちらを見ていた
「...葵」
「その様な表情は、日本に来た頃に見て以来ですね。チビも心配していますよ...」
眉を下げ微笑んだ葵は、テーブルにホットミルクが入ったカップを置いた
「なんだか疲れたの...」
「そんな時は無理をなさらない事です。これを飲んだら今日はお休みください」
カップを持ち上げてホットミルクを口に含む
こっくりとした甘さが体中に染み渡って、ほっと息をついた
「醜い心が、ミルクに溶けて無くなればいいのに...」
小さく呟かれた璃央の言葉に葵が首を傾げる
「璃央様...?」
「...美味しいわ、ありがとう。葵、おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさいませ」
葵は目を細め微笑むと頭を下げ部屋を出て行った