第13章 崩れゆく嘘[上]
「私がいると、雨宮君は戻ってこれない...」
「あゆちゃん、違う。そんな事ないよ」
「私が梨奈さんに似てるから...、雨宮君を苦しめてたのは私だったの...」
「そんな訳ない。だってあいつ...」
駿の服を掴むと、あゆは俯いたまま首を振った
「私...勝手に勘違いしてたのかもしれない。前は本当に雨宮君の事、嫌いだった。でも、梨奈さんの事...雨宮君の事を聞いて、最初は最悪な出会いだったとしても梨奈さんに似てる私が雨宮君に出会ったのは、何か理由があるのかもしれないって思ったの。でも...」
ゆっくりと顔を上げたあゆと視線がぶつかる
「ただ、雨宮君を苦しめる事しか...出来なかったのかもしれない...」
そう言った瞬間、あゆの瞳に溜まっていた涙がぽろぽろと溢れ出した
「あゆちゃん...」
「今は分からないけど、2人が幸せになる可能性は十分あると思う。でもね、武本君にも後悔してほしくない。雨宮君を引きとめる事が出来るのは、もう武本君しかいない...。私はもう何も出来ないけど...武本君には出来るよ」
「...それで、いいの?」
遠慮がちに問いかけた駿の言葉にあゆは迷わず頷く
儚く微笑むあゆを見て、駿はそれ以上何も言えなかった