第3章 現実逃避
目の前には...雨宮君
(ヤバイっ!)
本能的にそう思って後ずさる
「...どこ行くの?」
ジリジリと近寄ってくる彼
その声は優しいけど...表情は優しくない
「あ....、その...」
どうしよう...怖い
(もう嫌だ...。はやく逃げたいっ!)
思いきり目を瞑り肩を竦めて震えるあゆ
そんなあゆを見て、恵は嘆息した
「そんな怯えんなよ。もう帰るんだろ?」
彼の言葉に目を開けると、その手には私の鞄が握られていた
「......!」
「ほら。他に荷物あるか分かんねぇから、これしか持ってきてないけど...」
鞄を受け取って、呆然と彼を見た
(鞄...取りに行ってくれてたんだ...)