第13章 崩れゆく嘘[上]
「失礼しました」
職員室から出てきた恵と璃央
フランスへ行く為の準備は順調に進んでいた
「恵、今日は私と一緒に帰る?」
「...いや、家の片付けもしないといけないから」
廊下に出た瞬間に腕に抱きついてきた璃央を見る事なく恵は首を振った
その反応に僅かに唇を尖らせながら璃央は更に抱きついてくる
「そう...残念。仕方ないわね。フランスに行ったらずっと一緒だもの、我慢するわ」
ここにいられるのも、あと5日
(時間がない...)
気持ちばかりが焦る
璃央との婚約を決めた日から取れない心のしこりを恵はどうする事も出来ないまま、ただ時間だけが足早に過ぎていった
職員室を出てからずっと視線を合わせない恵に対して璃央は眉を寄せる
「...ねえ」
「恵?」
璃央の声を遮る形で不意に掛けられた声
振り返ると、勇介が立っていた
勇介は恵に寄り添っている璃央を見て、何か言いたげに恵へと視線を向ける
「...璃央、先帰って」
「どうして?嫌よ!」
「勇介と2人で話したい」
「......」
納得のいかない様子の璃央を見て、恵は宥める様に優しく微笑み頭を撫でた
「璃央...」
「...わかったわ。帰ったら必ず連絡してね」
璃央は渋々頷くと、一瞬勇介を睨み去っていった
安堵の表情を見せる恵を見て勇介は悲しげに眉を寄せる