第13章 崩れゆく嘘[上]
「ある日...梨奈の両親がその事を知って梨奈に転校を勧めた。梨奈のお父さんの話じゃ、初めは拒んだけど悩んで悩んで...高等部には進まないで別の高校に行くことを決めたんだ。...梨奈が行く予定だったのがこの学校だよ」
武本君の言葉に私は目を見開いた
(もしかしたら私も梨奈さんに会えてたかもしれないんだ...)
梨奈さんに似ている私
私に似ている梨奈さん
(もし、出会っていたら...仲良くなれたかな?)
そう考えると、なんとも言えない不思議な気持ちになった
「梨奈が死んで...中等部の残り1年間、恵は抜け殻だった」
儚く笑った武本君の瞳が悲しく揺れる
「酷かったんだよ、あの頃のあいつ。俺のことすら拒否してさ...。そんな恵が、3年の11月に突然俺に言ったんだよ。梨奈が行くはずだったこの高校を受験するって。俺も気づいたら恵を追っかけて一緒に受験してた...」
保健室で奈々先生から梨奈さんや雨宮君たちの話を聞いた事を思い出す
自分を責め続けた雨宮君は、現実から逃げるために学園を出たんじゃない
もしかしたら梨奈さんがこれから進むはずだった道を...代わりに進もうとしたのかもしれない
「俺...アイツが心配なんだ。家族から酷い扱いを受けて全く人を信用してなかった恵が、梨奈と出会ってようやく大切なモノを見つけたのに...」
武本君の声が震えて、喉が詰まるように言葉が止まる
悲しそうに顔を歪める彼を見て私は胸がいっぱいになった
「梨奈がいなくなってから3年経った今でも...恵の心には穴があいたままだから...」
呟かれた言葉にあゆは唇を噛みしめた
このままじゃいけない...
もし、雨宮君を引き止める事が出来なかったとしても...
何も話せないまま武本君と雨宮君が離れてしまうなんて絶対だめだ
(明日は何としてでも、雨宮君たちに会わなきゃ...!)
あゆは薄暗くなった空を眺めながら恵を思い浮かべるとゆっくりと睫を伏せた