第13章 崩れゆく嘘[上]
「当たり前だけど」と笑った武本君の言葉に私は顔を上げた
「梨奈は何があってもポジティブっていうか...明るくて、いつも笑顔だったから...。あゆちゃんが怒ったり、悲しんだりしてる顔見ると...安心するんだ」
「...どうして?」
「梨奈は自分の事は二の次で、常に周りの事を考えてる子だった。本当に毎日笑ってたから、俺たちに言えなかっただけで色々抱え込んでたんじゃないかって...今でも後悔してるんだ...。俺...梨奈が泣いたところ1回も見た事ないから...」
梨奈さんの事を思い出しているのか武本君の瞳は切なげに細められた
「でも、我慢して1人で抱え込むところは似てるかな」
「えっ...?」
「実は...梨奈もイジメを受けてたんだよ。恵の事が好きな女子たちから」
武本君の言葉に嫌がらせを受けていた時の光景が浮かび、思わず息を呑む
「恵は梨奈がイジメられてるなんて気づかなかった。もちろん、俺も...。梨奈も、あゆちゃんと一緒で1人でずっと耐えてたんだ」
梨奈さんも...辛い中、1人で頑張ったんだ
でも...梨奈さんが1人で耐えてた理由は私とは違う
私は雨宮君が嫌いで、言ったって意味ないと思ってた...
梨奈さんは...雨宮君たちに心配かけたくなくて言えなかったんだと思う
梨奈さんの気持ちを思うと喉の奥がぎゅっと苦しくなった