第13章 崩れゆく嘘[上]
「...俺とあゆちゃんはそれを阻止しようと思う」
暫くの沈黙の後、武本君は顔を上げると凛とした声でそう告げた
その声に迷いは無く
先生や山口君の表情も真剣なものになる
「俺は...」
ぽつりと呟かれた言葉は山口君から発せられた
「俺は、霧島って子の事よく知らないけど...。このまま恵をフランスに行かせるべきじゃないと思う。俺も何か出来る事があったら手伝うから」
真剣な眼差しを武本君と私に向けながら山口君は優しく微笑んだ
「ありがとう...勇介」
穏やかに微笑んだ武本君
しかし、その声はどこか震えていて...強がっている心を必死に隠しているかのような声色だった
本当なら...山口君や私は知ることの無い
関係の無い事だったんだろう
(今...ここに、梨奈さんがいたらこんな事にはならなかったのかな...)
ふと武本君と奈々先生へ視線を向ける
僅かに苦しそうに歪められた顔に2人の心情が痛いほど伝わってくる
(梨奈さんは、今でも皆の心の中心にいるんだ)
皆にとって本当に大きな存在だった人
良くも...悪くも......
それぞれの心に梨奈さんは大きな影響を与えてるんだ...