第13章 崩れゆく嘘[上]
武本君と広間へ戻ってくると、最初来た時と同じくらい大勢の人で賑わっていた
広間を見渡してあゆはふと疑問に思う
(婚約発表の時...いなかった人たちはどこにいたんだろう?)
これだけの人を招待しているのに、なぜ全員の前で言わなかったのか...
(もしかして...璃央ちゃんに何か考えがあるのかな...?)
あゆは不穏な予感に胸のざわめきを感じていた
「椎田っ!」
不意に大声で呼ばれたその声に顔を向けると、心配そうに眉を寄せた山口君が奈々先生と共に駆け寄ってきた
「体...大丈夫?」
今にも泣き出しそうな表情の山口君が少し屈んで私の顔を覗き込んでくる
(そうだ...。私、山口君と一緒にいた時に...)
「うん、大丈夫。心配かけてごめんね...」
安心させようと微笑んだ私を見て山口君の顔は安堵の表情へと変わる
しかし、体勢を戻し軽く息をつくと再び眉を寄せた
「松下先生から聞いたよ...。恵の事」
山口君の言葉に私と武本君は一瞬目を合わせると視線を落とした
賑やかな雰囲気の中、私たちだけ空気が重い...
「一週間後...璃央と一緒にフランスへ行くらしい」
ぽつりと呟いた武本君の言葉に山口君と奈々先生がそれぞれ驚きの表情を見せる