第10章 絡まった想い[上]
「でもね...梨奈と出会って、梨奈にだけは違った。梨奈とはいつも一緒にいたわ。あの子、偏見なく誰とでも接するから、雨宮君にはすごく心地よかったんでしょうね...」
先生の話を聞いて、梨奈さんがどれほどいい子だったのか胸が痛いほど伝わってくる
雨宮君の冷たく凍りついた心を溶かして
自分が犠牲になってまで猫を助けた
そんな素敵な人の人生がたった14年だなんて...
余りにも短すぎる......
「梨奈が亡くなってから雨宮君はまた昔の彼に戻ったわ。...ううん、それ以上だった。璃央ちゃんは梨奈が死んでからすぐフランスに行ってしまったし...唯一傍にいた武本君にでさえ、心を閉ざしていた...」
あの武本君にも...?
そんなに...だったんだ...
「自分を責めて、責め続けた雨宮君は高等部には上がらないで別の高校を受験した。武本君も雨宮君の後を追うように紅蘭学園を出て行ったわ。この学校にいるのを知ったのは、私が養護教諭としてここへ来てからだった。でも...色んな事に驚いた...。雨宮君の性格が全然変わっていたし...。それに、椎田さんが...」
「...私が?」
「梨奈にそっくりで、初めて見た時...本当にビックリした...」