第10章 絡まった想い[上]
「先生は...雨宮君を、恨んでますか?」
「恨むなんて、とんでもない...!梨奈の事故は雨宮君のせいじゃないから」
先生の穏やかな表情を見て本当にそう思っているんだと分かった
しかし、すぐに先生の顔は暗く沈んだ
「本当に可哀相なのは残された人間...。独りぼっちにされた、雨宮君よ」
「え...?」
(独りぼっち...?)
「彼はね、自分の家族に”悪魔”と呼ばれていたの。家族から見放されて...初等部くらいから1人でマンションに暮らしてた。雨宮君のお父さんが有名なお医者さんだから、息子を見捨てている事をバレるのが嫌で最低限の面倒は見てるみたいだけど...」
知らなかった...
偏見だって言われるかもしれないけど、お金持ちは皆幸せなんだと思ってた...
「雨宮君は小さい頃からすごく大人びてて冷めた子だった。何もしていなくても怒鳴られて...雨宮君の母親はヒステリックな人だったから、彼女の怒鳴り声は私でもトラウマになるほどだった。隠しているつもりでも、見てる人は見てるし噂はすぐ広まった。だから、雨宮君のご両親は彼を見なくていいように遠くのマンションに1人暮らしさせたの」
”悪魔”
自分たちの子なのに...悪魔だなんて、酷すぎる...