第9章 乱されるココロ
「残念だけど...俺が言える事は何も無い」
静まり返る室内
空調の動く音だけが響いていた
「そう、ですか...」
微笑交じりの声色に感情を逆撫でされて昂ぶってくる
軽く目眩がして足元をフラつかせながら椅子へと腰掛けた
「大丈夫ですか?」
「もう用は済んだだろ...。出て行けよ」
近寄ろうとしてきた相手を見る事無く静かに呟いた
「そうですね...。では、失礼いたします」
恵の言葉に葵は深く頭を下げドアノブに手を掛ける
ドアノブの回る音が聞こえて安堵の溜息をつこうとした瞬間、葵が思い出した様に口を開いた
「ああ...忘れていました。8月12日にお屋敷でパーティーを開きます。椎田様も招待いたしますので...是非恵様もお越しください。では...」
最後に一際印象深い笑みを浮かべて出て行った
「......」
張り詰めていた空気から解放されて今度こそ安堵の息をつく
(璃央のやつ...。あゆに何する気なんだ?)
あゆに梨奈を重ねているんだろうか...
恵は瞳を伏せ額に手を当てると、深く深く息を吐いた