第9章 乱されるココロ
「葵...。お前があの時、俺を止めなかったら...梨奈は...」
恵の言葉に葵は一瞬目を伏せると、軽く息をつき口を開いた
「...今回はある用件で伺わせていただきました」
手で額を押さえ俯く恵に反応は無い
葵は小さく息を吐くとそのまま話を続けた
「椎田あゆの事について、お伺いしたいのですが」
「!?」
あゆの名前を聞いて思わず立ち上がった恵に、葵は笑みを浮かべた
「随分、反応なさるのですね」
「なんで...あゆの事知ってんだよ」
鋭く睨み、低く呟く恵
それでも葵は怯む事無く穏やかに微笑んでいた
「璃央様がとても興味をもたれたようで...。同じクラスの恵様にお伺いすれば何か聞けるかと思いましたので」
(璃央が?なんであゆに興味を...)
「――...!」
まさか...
目を見開き眉を寄せる恵の様子に葵は目を細める
「我々がこの学校へ来る以前に、恵様は彼女と親交があったとお聞きしたのですが...」
恵の反応を探る様に揺れ動く葵の瞳
意向の分からない問いかけに恵は自分の心を悟られないように、ただ冷たい視線を向けた