第9章 乱されるココロ
コンコン
「.....ッ!」
ノックの音で我に返り思わず息を呑む
窓を閉め「どうぞ...」と返事をするとゆっくりと扉が開かれた
「失礼いたします。お久しぶりです、恵様」
入ってくると同時に頭を下げた長身の男
「...葵」
反射的にその男の後ろへと目を向けた
「残念ながら私1人です。璃央様とご一緒でしたら私は先に入る事はありませんから」
顔を上げて微笑む葵に眉をひそめ目を細めた
「突然お邪魔して申し訳ございません」
「何か用か?」
軽く睨みつける様に視線を向け椅子に腰掛けると、そんな恵を見て葵は困った様に眉を下げた
「恵様は昔から私に対してお厳しい...」
「昔から...?俺は別に昔からお前を嫌ってた訳じゃねえよ。どういう意味か、お前が一番分かってるだろっ...」
沸々と湧き上がる怒りに眉間に刻んだシワが深くなる
「恵様は、随分とストレートに感情をぶつけてくるのですね」
「...ッ」
余裕そうな笑みを見せる葵に対して、握り締めていた拳が机を叩いた
拳を震わせて呼吸を乱す恵を葵は表情を変えずに見つめていた