第9章 乱されるココロ

「お...お疲れ様でした！」

逃げるように駆けていく後ろ姿に山口君は軽く溜息をつくと、体を屈めて私の顔を覗き込んできた

「ごめんな...。嫌な思いさせて...」

そう...
嫌な思いをしたのは私

でも、優しく頭を撫でてくれる山口君の顔がすごく辛そうで...
私はまた泣きそうになった

「えっ...椎田ッ！？ごめん...俺も変な事言った？」

再び目に涙を溜める私を見て彼は慌てて涙を拭ってくれる

（本当...山口君は心から優しい人なんだな）

目尻を拭う指からも優しさが伝わってきて、彼の指先をキュッと掴んで見つめた

「違うよ...」

「え？」

「山口君が、優しいから」

真っ直ぐ見つめて呟いた私の言葉に彼の顔が赤く染まる

「山口君はいつも優しいね」

「そ、そんな事っ...」

頬を赤らめる山口君の指先を掴む手に力を込めた