第9章 乱されるココロ
ぼんやりと電話が終わるのを待っていると、通話を終えた咲綺が携帯片手に手を合わせてきた
「あゆ、ごめん!」
突然の事にすぐ反応出来なくて、私はただ目を瞬かせた
「アイスは今度絶対奢るからっ!」
顔の前で手を合わせて頭を下げる咲綺
武本君からの電話
謝ってくる咲綺
一呼吸置いてやっと理解した私は首を左右に振った
「全然大丈夫だよ!アイス食べに行くのなんていつでも行けるんだから。武本君との時間、大切にして?」
手を合わせている咲綺の手を包んで微笑んだ
「あゆ...」
「でも、アイスじゃなくてパフェ...奢ってね?」
「了解!行ってきますっ!」
にっこりと笑い手を振り走っていく咲綺に手を振り返す
(咲綺、すごく幸せそうな顔してたなぁ)
あれ...
そういえば、あの顔前にどっかで見た事あるような...
「あ、前読んだ漫画に出てきた女の子も同じような顔してたんだ!...って、結局漫画じゃん」
お昼に咲綺に言われた”夢見るだけの乙女”という言葉を思い出し1人肩を落とした
「......」
俯いてそっと唇に触れる
付き合うって...どんな感じなんだろう
好きってどんな気持ち?
好きな人とのキスって...本当にとろけちゃうのかな...
「...っ!やだ...1人で何考えてんだろ」
考えていた事に頬が熱くなると軽く頭を振って鞄を掴む
なんだか無償に虚しくて、泣きそうになってきた
(早く帰ろう...)
速くなった足取り
しかし、それはすぐに止められた