第9章 乱されるココロ
「咲綺...山口君と仲良かったっけ?」
「仲良いっていうか...部長会議とかで結構話したりするから。会議ではいつも司会やってくれるし、皆が嫌がる事も嫌な顔しないでしてくれるし、頼りがいがあって優しさの塊って感じの人だよね」
(確かに...)
私は無意識に何度も頷いていた
そこで疑問に思っていたことが自然と口に出た
「山口君って...彼女いないのかな?」
そんな私の呟きに咲綺は箸を止め目を丸くした
目を瞬かせる咲綺を見て私は不満げに唇を尖らせる
「な、なに...?私変な事言った?」
「そうじゃないけど...。あゆが漫画以外で恋愛の話題出すなんて...」
咲綺の言葉に眉を寄せた
「どういう意味...?」
言葉の意味が分からず首を傾げる
そんなあゆを見て、咲綺は楽しそうに微笑んだ
「あゆが夢見るだけの乙女じゃなくなったって事かな」
「夢見るだけの乙女?何それ」
あゆは唇を尖らせ呟くと咲綺は「ごちそうさま」と暢気に手をあわせる
「あゆの中で恋愛が身近になったんじゃない?最近は前みたいに漫画見て”こんな恋してみたい”とか夢見がちな事言わなくなったもんね?」
そういえば、最近漫画読んでない
それに...恋愛が身近に感じる様になったのも本当かも
咲綺と武本君がカップルになって、咲綺から惚気話も聞くようになったし
私自身、実際にキスとかしてみて...
そこであゆの思考は停止した
雨宮君とのことを思い出して唇をキュッと噛む