第9章 乱されるココロ
「山口君が?」
響いたのは咲綺の声
その後に「へぇ...」と呟くと、卵焼きを口に入れた
咲綺に話していたのはさっきの事
タオルを洗っていた私に昼休憩の報告をしに来た咲綺が、水道の上に置いてあったスポーツドリンクを見て疑問に思った事からこの話が始まった
『なんで...スポーツドリンク?』
これが咲綺から向けられた第一声
咲綺が疑問に感じた理由は簡単だ
私はあまりスポーツドリンクを飲まない
紙パックならイチゴミルク
ペットボトルならお茶を買う事がほとんどだ
そんな私の事をよく知っているからこその咲綺らしい疑問だった
「別に飲めないワケじゃないけど、本当に私が貰って良かったのかな...?」
そう...
私がずっと気にしているのはソレだ
自分の喉を潤わせる為に買ったであろうスポーツドリンク
飲み物が無くなったって言ってたし、バスケ部だったらきっと激しく動くだろう
こんな暑い中水分摂らなかったら、山口君が熱中症になっちゃうよ...
「山口君って優しいもんねぇ」
咲綺の声に俯いていた顔を上げる