第8章 癒えない傷
「そういえば、なんでだろう...」
顎に手を当て首を傾げる咲綺
咲綺自身に悪気が無かったことはその仕草で分かった
「....咲綺の意地悪」
そんな咲綺の様子を見てあゆはわざとらしく唇を尖らせる
「ち...違うよ!そんなつもりじゃ...」
泣きそうな顔をして思いきり首を左右に振る咲綺を見て、あゆは思わず頬を緩める
「ふふ、冗談だよ。それより部活行かなくていいの?」
「あっ!ヤバっ...遅刻だ!あっ...あゆ、今日は終わるの遅くなると思うから先に帰ってて。それじゃあ皆、よい夏休みを~!」
すっかり部活の事を忘れていたのか、咲綺は早口でそう言うと慌てて走って行った
「行ってらっしゃーい」
「さっちゃんもね~」
(がんばれ、部長)
ゆかり、理花と共に咲綺に手を振っていると、ふと誰かの視線を感じた
「...?」
キョロキョロと辺りを見ると、編入生の女の子と目が合った
目が合った瞬間
なんだかとても不思議な気持ちになる
なぜか目を逸らす事が出来なくて、彼女もずっと私を見ていた
(なんでだろう...目が離せない)
少しずつ鼓動が速くなって、手のひらに変な汗が滲んでくる
彼女の大きな瞳に吸い込まれそうになると、彼女はゆっくりと微笑んだ