第8章 癒えない傷
「あ、駿君!!」
3人の前方から咲綺がこちらに手を振っている
その隣には、あゆが並んでいた
無表情でこっちに歩いてくるあゆを見て胸が騒ぐ
なぜか璃央を腕にくっ付けたままその場から逃げてしまった
「あ!咲綺ちゃ~ん...って、恵!?」
背後から駿の呼ぶ声が聞こえたが、足が自然と来た道へと動いた
「なんだよ、あいつ...」
突然踵を返した恵を見て駿は頭を掻く
「おはよ~。どうしたの?」
咲綺は駿の目の前に来ると不思議そうに首を傾げ問いかけた
「いや、恵がさ...」
咲綺に目線を向けると、咲綺の隣に居たあゆを見て言葉を詰まらせた
(そっか、あゆちゃんがいたから...)
昨日の今日で会うのも気まずいし...
なにより璃央と一緒にいる所を見られたくなかった、ってわけか
黙り込んだ駿の視線を見て咲綺もハッとする
そんな咲綺たちの様子に、あゆは2人の気持ちを察した
「あ...私は平気だから。そんなに気を遣わないで?」
笑顔を見せてくるあゆ
昨日の痣が残るその顔で笑った表情は、明らかに無理している様子で...
駿はチクリと胸が痛んだ
(2人共、無理しちゃって)
「...いや、本当になんでもないよ。教室行こっか」
恵が戻っていった先へ一瞬視線を移し、3人で教室へと向かった
(恵の奴、素直になればいいのに。本当...不器用な奴)
駿はあゆたちには聞こえないようにひとつ小さく息をついた