第13章 襲撃
.
静寂を切り取ったような、本丸の夜。
湯女の自室にほんのりと灯りが付いていた。
ふと、廊下の方に気配を感じる。
「お姫、少し良いか?」
『三日月……?いいわよ』
彼女の部屋を尋ねたのは、三日月だった。
許可を得たと同時に、戸が開いたかと思えば淡い羽織を持った三日月が小さく微笑んだ。
「お姫はまた夜更かしか? 感心しないぞ」
『ふふ、それはあなたもそうでしょう。どうしたの……こんな時間に』
お互い、何かを察していたのかもしれない。
畳に視線を落とした湯女見つめ、三日月は彼女の近くへと腰を降ろした。
「夜はまだ冷える。これを羽織っておくと良い」
『……ありがとう』
差し出された淡い羽織を受取り、軽く羽織った。
『それで、どうしたの』
「どこまで喰われている? 主」
三日月の声色が、少しだけ鋭く変わる。
ーーなんだ知ってるのね。
湯女は心の中で呟くと、観念したように右腕の裾を捲った。
捲った先には、肩に向かって竜が登っていくような痣が腕に刻み込まれていた。痣なのか、刺青なのか、最早判別はつかないだろう。