第12章 憔悴
「それで、僕が行く前にここに来た理由でも聞こうか」
「光忠が、手入れ部屋から出てこないって俱利伽羅が言うから。私、ちゃんと直してあげられなかったのかなと思って」
「君はいつだって完璧さ。滞りなく、淀みなく、いつも通りさ」
「なら、なんで……」
「正直……、合わせる顔がないと思ったんだ。君や、俱利伽羅に」
燭台切は眉を八の字に下げ、今日までの出来事をその場にいる湯女と大俱利伽羅は振り返る。大俱利伽羅は壁に凭れ、湯女と燭台切の会話を割り込むことなく静かに聞いていた。
「僕さ、近侍から外されてすごく……すごく情けないんだけどね、落ち込んだんだ。僕はいつだって君のために頑張ってきたのに、頑張りが足りなかったのかなって」
「光忠……」
「君はそんなことを思ってする子じゃないってわかってるつもりなんだ、でも……書類仕事を忙しそうにこなす姿を見たり、長谷部くんが手伝っているところを見ちゃうとさ、考えちゃったんだ。なんで、僕じゃないんだって」
燭台切は二人へ背を向けたまま、大きな両足を抱え込んで膝に顎を乗せて馳せるように呟いた。