第12章 憔悴
◆◇◆
瞼に光を感じて、そっと開ける。
ぼんやりとした視界に輪郭が朧げに見え、褐色の肌を視認した瞬間飛び起きた。
「やめろ、起きるな」
「俱利伽羅……ッ! 無事!? か、身体は……」
「重傷だったと聞くが、この通り治った」
「よかった……ぁッ」
少しだけ、夢の中と出会った少年と俱利伽羅の姿が重なる。ふと、安堵からかじわりと涙が溢れてきて、ぎゅっと大俱利伽羅の服の裾を掴んだ。
掴む手に、重なるように大俱利伽羅の手が湯女の小さな手を包む。体温を覚えると、より彼が目の前にいる事実を嚙み締めた。
「光忠の方が、軽傷なんだがな……」
「光忠が、どうしたの!?」
「理由はわからんが、手入れ部屋から出てこないらしい。終わっては、いるはずなんだが」
湯女は大俱利伽羅の手を握って、部屋を飛び出した。
様々な感情が溢れ出しては混ざり、聞きたいこと、聞かなければいけないこと、山ほどあるように感じたが、それよりも燭台切の安否を確認すべく慌ただしく手入れ部屋へ突入した。
「光忠……ッ!」
「え……?」
勢いよく手入れ部屋を開けると、何故か上半身裸の燭台切が焦った様子で振り返る。
「ちょっ……ちょっとは外から声をかけてからでもいいんじゃないかな!?」
「あーー……えっと、ごめん?」
こてん、と湯女が首を傾けて謝ると燭台切は盛大な溜息をついた。
「僕、君にいつも言ってるよね。身だしなみだけはきちんとしようねって」
「うん……」
「もう……なんで僕が整える前にわざわざ来るかなぁ」
ここ数日の燭台切の様子を思い返して、今目の前にいる彼は少しだけ垢抜けたようにも思えた。曇っていた表情が、少しだけ晴れているような……湯女にはそう写った。