第11章 帰城
「主よ、よく戻ってきた」
「……えっ?」
「立派であったぞ。兎に角今は、身体を休めよ。話はそれからだ」
「……そうね」
三日月が本丸内に戻ると、凛と研ぎ澄まされた声が蜻蛉切を呼ぶ。三日月の声に、只事ではないと他の刀剣達も集まり出すと、湯女達の惨状を目の当たりにし各々が三人を支え本丸内へと入っていく。大倶利伽羅は手はず通り、蜻蛉切に運ばれ手入れへと向かう。燭台切もまた、軽傷とはいえ酷く疲労が見える。彼もまた、仲間達に支えられ手入れに向かった。
まだ、何もかも終わりではない。
そう自らの心に刻みつけながら、湯女は意識を手放した。
◆◇◆
もしも夢が何かを映す鏡ならば、今見ている夢は何を意味しているのだろうか。――海底に沈んだ意識は、いつの間にか浮上し瞼を開けると見知らぬ屋敷の中にいた。そして、不思議と「これは夢だ」とわかるのだ。
明晰夢、なのかもしれない。
湯女は一人横たわっていた身を起こすと、彷徨うように屋敷内を歩き始める。しかし、不意に鋭い痛みを右腕に覚えその足を止めてしまった。
「……どうして」
腕を捲くると、以前より伸びた鱗の痣がどんどん肩へと締め上げるように昇っていた。肩が重い。上げているのもしんどくなり、彼女は重力に従うように右腕を下ろした。屋敷の内装には、何処と無く覚えがある気がした。だが鮮明に思い出せるほどではなく、必死に思い出そうとすると頭が痛くなる。