第11章 帰城
少しずつ浮遊することなく沈み、息さえ絶えるかと思ったがそうでもなく、やがてゆっくり身体が浮くのを感じると徐に何かに引き上げられるような感覚を覚え、そのまま顔を出した。
「は……ッ!」
「……おかえり、主」
「はぁっ、は……え? みか……づき?」
全身濡れたまま、僅かに手首に温かなぬくもりを感じてそこへ視線をやるよ、誰かの手。視線を上げれば、三日月がいつもの微笑みを浮かべていた。
「ははっ、流石の俺もまさか主が池から戻ってくるとは夢にも思わなんだ」
「これは……一体」
「うむ、無事に戻ってこれたということは成功と言えようか。おや、そうでもないらしいな?」
三日月が湯女の後方へ視線を向けているのに気付き、湯女もまた振り返った。そこには、大袈裟に息を荒げては噎せる燭台切とぐったりとした大倶利伽羅がいた。どうやら無事、三人は元の場所に帰ってきたらしい。湯女は重たい身体にムチを打つように起き上がると、声を荒げた。
「大倶利伽羅が重傷なのっ、すぐに手入れ部屋に運んで! 人手がいるわ、三日月。蜻蛉切を呼んできて」
「あい、わかった」
三日月はそっと湯女の頭を撫でると、踵を返す。