第11章 帰城
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地下を脱出すると、いつの間にか城内と思わしき室内にいた。燭台切が辺りを見渡すと、蝶がふわりと室内を出ていくのが見えた。慌てて追うように、燭台切も歩みを進める。見失ってしまうかと思ったが、暗い城内でも妖しく光る蝶のお陰で安全に道を進むことが出来た。安堵する暇もなく、城内から今度は庭へと出る。ここに一体、何があるというのか?
すると、蝶は小さな池の傍で漂うように舞って止まっていた。
「蝶くん、ここに何があるというんだい?」
池の傍に湯女と大倶利伽羅を休ませると、燭台切は一人池に近付いた。そっと、池の中を覗いてみると当然ながら自らの姿が映り込む。と、思いきや水面の景色は一変する。燭台切の姿から、三日月の姿へと変化した。
「み、三日月
さん……?」
水面に映る三日月は、一瞬不思議そうにするも「なるほど!」とばかりに手を打って嬉しそうな顔をしてこちらへと手招きしている。あやかしの類か? 罠か? 燭台切が一度蝶へと視線を投げると、蝶は傍らでふわふわ漂っているだけだ。きっと、これに意味はある。
「主、池に飛ぶこむけど構わないよね?」
「……構わない、けど……何をするつもりなの」
「倶利伽羅君は僕が運ぶよ、主が先に行ってくれ」
「……? わかったわ」
湯女は半ば放心状態のまま立ち上がり、池へと距離を詰める。視界の端に蝶が映り、その正体に気付いては目元を緩める。
「ありがとう」
小さく呟いて、湯女の身体は池の中へと落ちていった。