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刀剣乱舞 双竜はザクロを噛む

第11章 帰城



 葛籠の中から姿を見せたのは、立派な『大倶利伽羅廣光』の名を持つ刀。美しい倶利伽羅竜が彫られており、湯女は無意識にそっと竜を撫でる。触れた箇所から、ほんのりと温もりを覚えた気がして湯女は息を吐く。――まるで、生きているみたい。


「やめろ、そんな風に触れるな」

「……廣光?」


 静寂を斬り裂くように聞こえてきた、廣光の声。湯女は彼へと視線を向けると、眉間に皺を寄せた彼の姿が視界に飛び込んでくる。距離が、迫っている。――刹那、湯女の身体は葛籠から引き剥がされるかのように廣光の手で後方へと吹き飛ばされる。


「……っ!」

「湯女……ッ!!」


 大倶利伽羅は湯女の姿を目視すると、急いで地を蹴り駆け出そうとする。だが、前方を塞ぐように大きな影が立ちはだかった。


「行かせないよ、倶利伽羅……っ!」

「光忠……ッ、どうして……どうしてあんたが邪魔をする!? あんたも俺と同じ、あいつの刀じゃないのかッ!」

「そうだよ……僕は、君と同じ……彼女の……湯女ちゃんの刀だ」

「なら、ならどうして……ッ!」

 大倶利伽羅は刀を構え、下唇を噛みながら燭台切と対峙する。湯女はゆっくりと身体を起こすと、二人の姿を遠くから見つめて不安げに瞳を揺らしていた。

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