• テキストサイズ

刀剣乱舞 双竜はザクロを噛む

第10章 回想



「大倶利伽羅だ……慣れ合うつもりはない。俺は勝手にするぞ」

「……」

「おい、聞いているのか?」

「綺麗な刀ね」

「……っ」

「あ、私は湯女。宜しくね、大倶利伽羅」


 綺麗と告げた時の彼の顔を、私は今でも覚えている。とても驚愕したような、何を言っているんだこいつとでも言いたげな顔をしていた。けれど、その中にどこか嬉しそうな表情が含まれているように思えて。ああ、きっと良い刀なんだろうなと思えた。

 その時から私はきっと、彼の美しさの虜となっていた。

 丁度練度上げや早く本丸に慣れてもらうため、何より私が……少しでも近くで彼を見ていたくて倶利伽羅を……近侍にする決定を下した。

 それについて、やはり光忠から言及されたが私は突っぱねてしまった。


 私は今の生活が好き、大好き。刀剣男士の皆のことも大好きだし、光忠も倶利伽羅も大切で大好き。

 この日々がずっと続けばいいなと、そう思っていた。疑うことなく、続いていくものだと思っていた。でも……夢を見る、暗い暗い夢。誰かが孤独に震えて泣いている。誰? 貴方は誰なの? 私を呼んでいるの?


 ――政宗公……。


 ねぇ、そんな悲しい声で泣かないで。私が傍にいてあげるから、泣かないで。












「これは……?」


 一瞬で記憶の海から意識が引き摺り起こされる。ああ、今まで私が見ていた光景は過去だったのか。なら、今私の目の前にある刀は何? この葛籠は……ああそうか、そういうことか。


「貴方が呼んだのね、大倶利伽羅廣光」


 葛籠の中身はやはり、あの美しい倶利伽羅竜を刻んだ綺麗な刀。大倶利伽羅だ。

/ 93ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp