第10章 回想
「僕は燭台切光忠、青銅の燭台だって切れるんだけど……あはは、格好つかないよね」
「……」
そう、彼はあの伊達正宗の刀だったはずの……燭台切光忠だ。審神者になって以来、どんな刀剣男士達がいるのかくらい勉強はしてきたけれど。こう、目の前にすると……どう言葉にしていいのかわからないわね。
「主?」
「私は……今日から貴方の主、湯女よ」
「湯女ちゃん……だね? ふふ、宜しくね」
とても格好いい刀だった。優しくて気遣い上手で、けれど……いつの間にか彼が身の回りの世話をするようになり、自然と近侍にさせていると徐々に私の目の前にあったはずの膨大な仕事がなくなってしまったように思えた。
それは何故? 本当になくなったわけではない。彼、光忠が手伝うようになって以来……急激にやることが減ってきたのだ。「これは僕がやろう」「主は座っていてくれ」とそう言われる度に、仕事を任せているとそうなってしまった。
いつの日か、光忠がいなければ何も出来なくなりそうだなぁと思うようになった。
◇◆◇
けれどある日、更に新しい刀がやってくる。それが大倶利伽羅だった。
彼はとても綺麗な刀だった。美しい褐色の肌、透き通るような鋭い瞳。光忠と同じ瞳のはずだけれど、少しだけ力強さが彼よりもあって……何処までも自由に見えた。