第10章 回想
「今って学校の帰りですか?」
「見ればわかると思いますが?」
大学生になった私は、祖母と祖父が育ててくれた家を出て一人暮らしをしていた。大学生活は順調、何も大きな問題はなかったはずだ。今目の前のことを除けば。
「そうですか、では良ければ近くの喫茶店で詳しくお話をしませんか?」
「新手のナンパですか? 帰ります」
「伊達湯女さん、貴方は伊達正宗という歴史上の人物を知っていますか?」
「……」
思わず踏み出した足を止めてしまう。不意に振り返って視線を向けてしまうと、男は嬉しそうに微笑んでこう続けた。
「僕は時の政府特務機関、審神者課の佐伯と言います。単刀直入に通達致しますと、現時刻を持ちまして伊達湯女さんは刀剣男士達と共に歴史を守って頂く貴重な人材、審神者になる適正審査を通過しました。俺と共に、来てもらえますね?」
「適正審査……?」
「はい、貴方の保護者である方からきっちり、審神者認定の書類を受け取っております。保護者の同意は既に得ているとお考え下さい」
「そんな……っ、だって私祖母達からは何も聞かされていないわ!」
「では、伝言を預かっておりますので湯女さんにお渡ししますね」
そう言って、男は私に一通の封筒を差し出して来た。私は不愉快な感情を隠すことなく、彼を睨み付けて封筒を受け取った。
中を開けて手紙を開けば、そこに綴られている文字を見ただけですぐにわかった。ああ、これは祖父の字だと。その手紙の内容は、自分の家柄の事と私が……――伊達正宗の先祖返りだということが記されていた。
伊達政宗の魂を受け継ぐ私なら、きっと歴史を守るための力も秘められていることだろうと試しに審神者認定の書類を秘密で出していたとか。そして私は、残酷にもその認定に合格してしまったことが書かれていた。