第10章 回想
――私の名は伊達湯女。自分の苗字に対して思う処はあるものの、変な苗字というわけでもないし大きく気にしたことはない。学生の頃、何度か伊達正宗みたいだといわれたくらいで。
そんな歴史上の人物の苗字を持っているなんて、格好いいねとか女じゃないみたいだとか。まぁ、そんなことはどうでもいい。
私の家は他の人達が想像しているような、伝統ある由緒正しき家系……というわけでもない。母親も父親も普通だし、離婚したけれど。祖母も祖父も私には優しくしてくれた。学校にも通わせてくれたし、何不自由なく暮らしていた……はずだった。
大学生になった私の目の前に、時の政府だとかいうインチキ臭い人達が尋ねに来るまでは。
◇◆◇
「貴方が伊達湯女さん、でいいですか?」
「……そうですけど、貴方は?」
「俺は佐伯と言います。率直に申し上げますと、審神者になる気はありませんか?」
「は……?」
男の名は佐伯。今の時代、着流し? 浴衣? そんな姿で外に出歩いている人を見かけたのはもしかしたら初めてかもしれない。彼は見た目からして、私のそんなに年齢は変わらないように見えたが、とても落ち着いているせいでそう思うだけであって。もしかしたら、本来はもっと若いのかもしれない。
しかも、見た目がもう……変人すぎる。その浴衣姿だけでもおかしいのに、真っ白の髪に赤い瞳。なんだろう、こういうのってアルビノって言うのかしら? そういった類の人物に思えた。