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刀剣乱舞 双竜はザクロを噛む

第9章 葛藤



「湯女……その葛籠を俺に渡せ。あんたが名乗らないというのなら、それでも構わないさ。肝心なことはそこじゃない、俺にはどうしてもその葛籠の中身が必要だからな」

「嫌よ、これは絶対に渡さない!」

「……残留思念に、よからなぬ入れ知恵でもされたか?」


 廣光は不敵に口元を歪めては、素早い動きで湯女が稼いだ距離を一気に詰めてしまう。


「来ないで……ッ!」

「甘い、あんたは何もかもが甘い」


 彼の手は呆気なく湯女が抱える葛籠へと伸ばされ、強引に奪い去る。湯女が慌てて葛籠へと腕を伸ばすが、それを彼が許すはずもなかった。すぐに身を引き湯女の手を逃れた。


「これはあんたよりも、俺にこそ相応しい」


 廣光が嬉しそうに葛籠の中身を開けようとした……――その瞬間。


「……おい、お前。それに触るな」


 誰かの声が響く、低く、けれどその声は何処か怒りも含んでいて。ただ湯女にはとても聞き慣れた声で……顔を上げて相手の姿を確認する。――ああ、やっぱり。そんな思いと共に、瞳に映った男の姿に安堵したような気がした。


「ははっ、あはははッ! これは傑作だな、大倶利伽羅。あんたがこっちに来るとは思わなかったぞ……実に想定外だ。ははッ」


 廣光が高笑いしながら振り返った。湯女と廣光の視線の先には、大倶利伽羅が刀を構えて立っていた。

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