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刀剣乱舞 双竜はザクロを噛む

第8章 月光



 外はすっかり夜に変わり、覗いた池からは反射するかのように美しい満月が水面に映りこんでいた。大倶利伽羅の傍らにいた鶴丸が、小さく呟く。


「鏡の池に投げ入れろ、そうすれば自ずと道は開ける」

「わかった……」


 大倶利伽羅が手鏡を池へと投げ入れると、その直後水面に映っていた光景が変わっていく。何処かよくわからない、屋敷が映し出されていた。


「鶴、これは……」

「……なるほどな。厄介な奴がいそうだ」

「二人にはわかるのか? この屋敷の正体が」


 何も答えようとしない三日月の代わりに、鶴丸が水面を覗き込みながら答える。


「そうさな、多少はどういう類のものなのか。わかるのはそれくらいで、中にどんな奴が潜んでいるのかまではわからない。でも、多少お前さんならわかるのかもしれないな……何せ、相手はお嬢に竜の鱗を植え付けた奴だからな」


 大倶利伽羅が険しい顔で、そっと池へと近づく。不意に背後から何かを投げられた気配を感じ、後ろ手にそれを受け取る。それは三日月が持っていた、呪詛に関する書物。ちらりと後ろを振り返ると、三日月と目が合った気がした。


「そいつを持っていけ、大倶利伽羅。俺には不要なもの故……主を、頼んだぞ」

「……、わかっている。必ず湯女を連れて帰る」


 大倶利伽羅はそのまま、迷いなく池へと飛び込んだ。何やら今までに感じたことのない気を身に帯びながら、それを振り払うにように通り抜けた先には、水面で見た屋敷が目の前に建っていた。
 驚くほど、立派な屋敷で何か面影を残している気がして、大倶利伽羅はいつにもなく眉間に皺を寄せるのだった。


「……忌々しいな、伊達の屋敷に……とても似ている」


 そのまま大倶利伽羅は、書物を懐に忍ばせて、一歩を踏み出した。

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