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刀剣乱舞 双竜はザクロを噛む

第1章 竜頭





 先に本丸内へ大倶利伽羅と共に足を踏み入れていてた少女――湯女。彼女はこの本丸の主であり"審神者"と呼ばれる職に就く特殊な人間である。と言っても、初めから彼女は審神者となるべくして生まれて来た人の子、というわけでもない。

 審神者と呼ばれる者達――特異な力を持って付喪神に人の形を与え、この世に顕現せし者のこと。付喪神――あらゆる時代、あらゆる戦乱の中で生まれた刀。彼らのことを人は【刀剣男子】と呼ぶのだった。


「戻られましたか、湯女様」


 ひょっこりと湯女達の前に現れたのは、愛らしい姿をした狐。にっこりとまるで人間のように表情を作る狐に、湯女は冷たい表情で見下ろし口を開いた。


「こんのすけ。政府の役人共はなんと……?」

「はい、例の審神者に関する情報は一切開示できないと門前払いされました」

「そう……。では引き続き調査をなさい、私の憂いが晴れるまでね」

「かしこまりました」


 こんのすけは深々と頭を下げると、すぐにその場を立ち去った。大倶利伽羅が湯女へと視線を向ければ、湯女もまた視線を返した。


「貴方が気にすることではないのよ。これは、私達審神者会の調査対象なだけ」

「以前演練会場で出会った男の調査か。ふんっ、相変わらずお人好しなところは直らないと見える。そうして他人のために時間を割いて、審神者としての立場も危うくなるであろう事柄に首を突っ込んで、よっぽど早死にしたいらしいな」

「そう見えるかしら? でも私は死なないわ、絶対にね。ところで倶利伽羅……」

「なんだ」

「竜って、人を食らうこともあるのかしら?」


 あまりにも突拍子のない話だった。大倶利伽羅は深く眉間に皺を寄せると、一度考えてから口を開いた。

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