第8章 月光
「竜の鱗、とな。少しだけ聞いたことがある……とはいえ俺も昔人伝に聞いた程度だが。この文章を見ろ、とてもよく似ている。お前さんの話に」
「……」
大倶利伽羅が目を向けた箇所には、確かに先程話したのとほぼ同じ内容のことが書かれていた。
「竜の鱗を刻まれし乙女、やがては同じ魔物になり果てる。この呪詛を解くためには、まず術者を捕らえる必要がある。心当たりはあるか?」
「……わからない、ただ……あの鱗は……確かに倶利伽羅竜に通ずる痕だった。僅かに俺の気と同じ感覚が残っていた。だが……あれは」
「……ところで、光忠はどうした?」
三日月の言葉に、大倶利伽羅は追加で先程の出来事を打ち明ける。手鏡に怪しい気配が残っていたこと、そして燭台切の様子がおかしかったこと。すると三日月は一度深呼吸して、一呼吸置くと口を開く。
「光忠なら何か知っているかもしれないな……」
「だが、あいつは鏡の中に消えていった。聞くと言っても……ッ」
「話は全て聞かせてもらったぞ!!」
どんっと凄まじい音を立てて、部屋の障子が開けられる。大倶利伽羅は驚いた顔で振り向く中、三日月は既に訪問者の存在に気付いていたとばかりに、あまり驚いた様子を見せずに視線だけ向ける。