第8章 月光
「俺の部屋に来い。話をしよう……お前さんの知る情報を俺に教えておくれ。そうすれば、この現状の全てを明らかにすることも可能であろう」
次々に起きる出来事に、大倶利伽羅の脳内は整理しきれない膨大な謎で溢れ返っていた。それを一度整理し、様々な意見を取り入れることも必要なのかもしれない。そう感じた彼は、仕方なく三日月の提案に乗ることにする。
◇◆◇
三日月の部屋に着いたところで、薄暗くなり始めて辺りを照らすように、ゆっくりと室内に蝋燭が灯る。
「まぁ、入れ。お前さんの部屋と同じで何もない部屋だがな」
「……なんであんたが俺の部屋の内情を知っている」
「はっはっ、ただの勘というやつだ。深い意味などない」
小さく「よっこらせ」と零して三日月は腰を下ろす、大倶利伽羅もそれに習うのだった。二人分の影が揺れ、三日月は懐から一冊の本を取り出した。
「それは……?」
大倶利伽羅が問えば、彼はゆっくり瞬きをして表紙を見せてくれる。そこには"呪詛"と書かれていた。
「大倶利伽羅、呪いとは古来より変わらぬものだ。どれのほどの年月を費やしても、まるで魂ごと絡め取ろうとするかのように執念深く、厄介なものが多い。さて、お前さんの知る主の近状を聞かせてもらおうか」
そこで初めて、大倶利伽羅は燭台切以外の者に竜の鱗の話を口にする。話を聞いていた三日月は美しい顔を歪め、少しだけ眉間に皺を寄せると考え込む様子で、手元の本を開いた。