第7章 輪廻
湯女は深いため息をついて、心と頭の整理を付け始める。この話を信じていいのだろうか? まるでおとぎ話のような、馬鹿げた話だ。しかも得体のしれない、燭台切光忠によく似た少年が口にする言葉。何処まで信じていいのだろうか……そもそも、全てが嘘なのか。
少年を信頼するだけの情報が足りな過ぎた。湯女は苦い顔をして、少年の握る手をそっと離させた。
「その……君の話を、頭から疑うわけじゃないんだけど……何処まで信じていいのかさえ、私にはわからないの。それに私、自分の本丸に帰らなくちゃ……」
「……。人間様、今そのまま帰ったところで、何も終わらないよ。ねぇ、どうして人間様は伊達政宗様の魂を持っているのに、違うの? ねぇ、どうして?」
「どうしてって……、そんなこと言われても……私にもわからない…わよっ」
「そこで、何をしているのかな?」
不意に聞きなれた声が、部屋の中へと飛び込んでくる。湯女と少年が同時に障子の方へと目を向ければ……。
「……どうしてそんなに怯えた顔をしているのかな? 湯女ちゃん。僕が、怖い?」
「……っ、光忠……貴方どうしてここに!?」
「さぁね……理由はよくわからないけど。でも、感覚的にここがどんな場所なのか……僕にはわかる。湯女ちゃんこそ……どうして"神域"にいるのかな?」
「しん、いき……?」
まるで鈍器で頭を殴られたような、そんな衝撃を受けた。湯女にとってはただの夢のはずだった、どこまでも夢のはずだった。だというのに。