第7章 輪廻
「……ねぇ、君。この先には何があるの?」
「……大倶利伽羅廣光という名の、刀。地下深くに納められている。でも竜の人、それを手に取れない。伊達政宗様のもの、貴方を取り込むことで、あの人は本物になろうとしている」
「ごめんね、本物って……意味がわからないのだけど」
「あの人がどうしてこの、夢の中にいるかわかる?」
湯女が眉を顰めれば、少年はしっかりと彼女の手を握っては真っすぐな瞳で見つめて言葉を紡ぐ。見つめ返した先に移るのは、湯女にとって見慣れた男の蜜のような金色の瞳。
「伊達政宗様の魂が輪廻に入った頃、竜の人は時間をかけて霊力のある人間様の魂を食らい仮初の付喪神となった……力を蓄えてきた。伊達政宗様の魂を自分のものにして、本物の付喪神になり替わろうとしているんだ」
「……それは、彼にとってどんな利点があるわけ? 意味が分からない……正直混乱してる」
「あの人は、正式な付喪神じゃないんです。顕現された魂じゃない、魂を食らい自らの力であの姿を成している。実際には実体もない、だからあの人は本物の大倶利伽羅廣光を扱えない。扱うためには、もっと力のある魂を食らう必要がある。それか、彼に最も縁のある魂を」
「それが、伊達政宗? え、でも彼のそばにあった刀は?」
「あれは……彼が自分の姿と共に形を成しているだけの、所謂偽物。あれもまた、本来実体のない刀」
「そういうこと……えっと、つまり。廣光自身は私のよく知る付喪神とは違うもの、姿があるのは今までに食らった魂の霊力を増幅させた……形でいいのかしら? そして彼の目的は、その伊達政宗の魂を食らって……本当の付喪神になり替わって……大倶利伽羅廣光を奪うこと、かしら?」
少年が小さく頷く。