第7章 輪廻
「どういうって……そのままの意味に決まってるじゃないですか、人間様」
少年はにこりと微笑んだ。まるで随分と可笑しなことを言う、とでも言いたげだ。湯女は視線を彷徨わせると、少年はそっと湯女へと手を伸ばした。
「人間様、こっち」
「え……? ちょっ、ちょっと……」
少年に手を引かれるがままに、湯女は先程から変わらない長い長い廊下を再び真っすぐ歩き始める。しかしあれほどまでに、一向に変わることのなかったはずの景色が一変、真っすぐ進んだ先に障子が見えた。
少年は躊躇うことなく障子を開けると、その中へと湯女を誘う。眩い光が漏れたことで、湯女は一瞬目が眩んだ。やっと白んだ景色に慣れたかと思えば、そこに広がる景色に湯女は息を飲む。
――障子を開けた先には、何の変哲もない部屋……と不気味な大きい鉄扉。
なぜこんなところに? そんな問いかけをする暇もなく、少年は「こっち」と湯女の手を引いた。
「あの、ねぇ……! 私を一体どこへ連れていく気!?」
「人間様……竜の鱗がある」
「……っ、この鱗のこと……知ってるの?」
「何人も見てきた。人間様、竜の鱗……でも誰一人それから逃れたことはない。あの人のせい、あの竜の人のせい」
「竜の人……廣光、のこと?」
「そう。あの人、ずっと探してた。人間様、伊達政宗様のこと。見つけた、貴方。だからきっと……今度こそ、逃げられない。でも大丈夫、僕が……人間様を……助ける、から」
「……。どうして、君は私を助けてくれようとするの? だって私たち、会って間もないでしょ? 初対面……でしょ。今までの子達は助けてあげなかったの?」
「……人間様は、特別。今までの人間様、霊力が足りない。逃れる術、ない。でも人間様、違う。伊達政宗様の魂……持ってる。唯一、竜の人に対抗する術……ちゃんとある」
少年が鉄扉を開けると、そこには薄暗い石階段が下へと続いていた。長い長い階段なのだろう、どんなに目を凝らしても終わりが見えない。