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刀剣乱舞 双竜はザクロを噛む

第7章 輪廻



「光忠……なの?」


 少年は彼女のよく知る、あの"燭台切光忠"の姿を象っていた。しかし一つ違う部分を上げるとするならば、少年の右目に眼帯はないというところか。けれど不可思議なことに、少年はただ首を傾げて湯女をじっと見つめるのみだった。彼女の問いに、答える様子はない。


「それが、僕の名前……なんですか?」

「どういう、ことなの……貴方……どうしてそんなに縮んで」

「……? 僕は、打たれてまもない、刀、です。本来、人と同じ姿を持たぬ、ただのモノ、なのですが……おかしいですね。どうしてでしょう?」


 いまいち話が噛み合わない。少年が再びこてん、と首を傾げると同時に"ちりん"と鈴の音が鳴った。どうやら、鈴の音の正体はこの少年だったらしい。湯女は仕方なく少年の目の前でしゃがみ込んでは、同じくらいの目線になり話を始めた。


「君、自分の名前がわからないの?」

「……言ったでしょ? 僕は打たれて、すぐの、刀。名前はない、の」

「……あら、そう。そういえば、さっきの伊達政宗ってどういうこと? どうして私を、その名で呼んだの?」

「……? だって、人間様。僕を初めて手に取ってくれた、伊達政宗様と同じ、同じだから」

「同じ? ちょっと意味が分からないのだけど……私は伊達政宗なんかじゃないわよ?」

「どうして? "同じ魂"なのに??」

「……。どういう意味」


 湯女は少年の言われた言葉を耳に入れると、表情を強張らせた。

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