第7章 輪廻
行きは良い良い 帰りは怖い
怖いながらも通りゃんせ 通りゃんせ
絶えず聞こえる鈴の音。まるでそれに誘われるように、けれど何処か導かれているかのような錯覚にも陥りながら湯女は必死に鈴の音がする方角へと足を進めた。歩けど歩けど、長い廊下が続くばかりで左右どちらを見ても部屋と思わしきものは見つからない。
何処まで行けば、音の元へと辿り着けるのだろうか? 湯女がそう思い始めた時、前方は霧がかり視界が悪くなり始める。不意にその瞬間、足を止めるとだんだん鈴の音が徐々に近付いてきているように思えた。
「なに……誰か、いるの?」
見えない何かに声をかける。霧でますます何も見えない、見えないという恐怖は次第に湯女の鼓動は速くなり始めた。何がいる? 誰がいる? 湯女は全神経を集中させて、鈴の音が目の前に来るのを待った。
ちりん ちりん
薄っすらと、目の前にぼんやり影が浮かび上がってくる。だんだんと輪郭がはっきりとし始め、湯女はその姿をようやく捉えると目を丸くした。
「え……っ、どういう……こと?」
「……初めまして、人間様。いえ、伊達政宗様」
「……だ、て……?」
目の前に現れたのは、少年の姿をした子。だが湯女が目を丸くしたのは、そのせいではないらしい。