第4章 悠遠
「あっ危なっかしいんだよ……あんたは。その辺で躓いて転ばれても困る。だから、掴め」
「……。ぷっ、はいはい」
湯女は思わず吹き出しながらも、笑顔で彼の手を取った。ぐいっと引き寄せられて、互いの距離は近くなる。湯女が顔を上げれば、倶利伽羅と目が合った。
「……ッ、こっち……見るな」
「ああ……うん」
金色の瞳が目の前にあって、逸らされて初めて湯女自身も恥ずかしい……と感じた。何度か近い距離で触れることもあるにはあった、とはいえ……意識したことなどなかったように思う。二人きり、触れた手の温かさ。
湯女が掴んだ大倶利伽羅の手を、しっかりと握ればぴくりと彼の手が反応を見せた気がした。
「火鉢……何処だ」
照れ隠しのように、何気ない言葉を紡いで……そっと手は握り返される。そんな彼のさりげない言動が、何故か無性に嬉しく思えて。湯女は微笑んだ。
「ん、こっちよ!」
どうかこの繋いだ手が、けして離れることがないようにと。