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刀剣乱舞 双竜はザクロを噛む

第3章 来往



「大倶利伽羅……?」


 湯女がそう口にすれば、夢は大きなノイズが走りすぐに掻き消えていった。



 ◆◆◇◆◆




 深い闇から意識は浮上し、湯女が飛び起きればそこは見慣れた自室の閨。額に玉のような汗が流れ、湯女は思わず袖で拭った。


「……ッ」


 僅かに右腕に痛みが走った気がして、慌てて腕を捲れば前よりはっきりと浮かび上がった倶利伽羅竜の刺青。腕から徐々に肩にまで伸び始めていることに気付く。

 湯女は慌てて布団を蹴飛ばし、部屋を飛び出そうと襖を開け更に障子を開けた――瞬間、誰かにぶつかってしまう。


「主……?」

「……みっ光忠……ッ」

「起きたの? びっくりしたなぁ……起きた時にと思って、食事と水を持ってきたんだ。ほら、もうこんな時間だから」


 湯女が視線を上げた先には、いつも通り微笑む燭台切の姿があった。彼の言う通り、外はいつの間にか夜を迎え夏特有の鈴虫の声が聞こえていた。湯女の強張った表情を目にすると、燭台切は眉間を皺を寄せ空いた手で彼女の身体を抱いた。


「どうしたの? 怖い夢でも見た? ん、ここじゃ目立つから……部屋の中に入ろうか」

「え、ええ……」


 燭台切の手で、再び部屋の中へと引き戻される。未だ混乱する中、燭台切は机にお盆を置くと、徐に湯女をそっと抱きしめてその背を撫でた。

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