第3章 来往
「他の審神者からも、情報を求めた方が良さそうね。問題は、誰をお共で連れていくか……かしら」
中堅審神者会。これは審神者達が独自に行っている会議の一つで、政府が一切関与していない審神者達のための会である。それなりの実力を持ちながら、上位に拘らない者達が自然と集まり出来たものであり、湯女もその一人だった。
審神者の身の安全のため、必ず一人お共の刀剣を連れていくのを義務付けている。
そうして悩んでいると、障子の向こうで声がかかった。
「おい主、一つ相談事があるんだが乗ってはくれないか?」
「……鶴丸? 構わないわ、入って」
湯女がそう告げると、鶴丸はいつも通りの微笑みを浮かべて部屋へと足を踏み入れる。ふわりと白い着物が揺れ、まるで粉雪でも被っているかのようだ。頭の上から足の先まで。白に覆われた彼は、何相応しいほどに鶴だ。赤といえば、唇の赤くらいか。
湯女が苦笑いを浮かべると、鶴丸は首を傾げて彼女の前に腰を下ろした。
「どうした。君がそんな顔をして俺を迎えるなんて、珍しいじゃないか」
「いや、丁度いいところに来てくれたなと思って」
「ん……? ああ、その手に持っているのは今月の審神者会か? なんだ、またお共の刀剣のことで悩んでいるのか?」
「そうね……。いつも光忠にお願いしていたけど、今の近侍は倶利伽羅だから……やはり連れていくなら近侍の方がいいし。誰でもいい、とは言うけれど自然と皆、近侍を連れていくのが決まりになっているし」
「人間ってのは暗黙の決まりというものがあって、非常に面倒臭い生き物だな。ははっ、だが俺は嫌いじゃないぜ。人間は愚かで醜い、だからこそ面白いし飽きない。退屈で死ぬこともないし、俺は結構この世を楽しんでいる」
「貴方のそんな話を聞くために、招き入れたわけじゃないわ。で、貴方こそ何の用?」
湯女が露骨に話題を変えると、鶴丸は一度目を細めて腕を組んだ。