第2章 鱗片
「ちょっ、大倶利伽羅!?」
「少し熱がある……。二日も徹夜続きだったんだ、もう寝ろ」
「でもっ、夕餉は!?」
「俺から光忠には言っておく……。一応、俺はあんたの近侍だからな」
執務室の奥には閨がある。そこまで湯女を抱えていくと、そっと座らせて手早く布団を敷いた。彼女を布団に寝かしつけると、大倶利伽羅は仲間達の前ではけして見せないような表情で……優しく湯女の頭を撫でた。
温かくて、心地よくて。湯女はだんだんと意識が微睡みの中に消えていくのを感じた。完全に眠りに落ちてしまう前に、大倶利伽羅へと声をかける。
「ねぇ、大倶利伽羅……」
「……なんだ」
「貴方が近侍になって、もうひと月が経つのよ。大変なことは多いけれど、以前よりもね……ここにいるのが楽しいの。どうしてかしら」
「さあな、俺が知るか」
「ふふ……あの時倶利伽羅が、警告してくれなかったら……私は……きっと……」
そこまで口にすると、湯女は静かに眠りについてしまった。大倶利伽羅はもう一度だけ、優しく彼女の頭を撫でて部屋を静かに出た。
廊下に出たところで、丁度燭台切と鉢合わせとなった。