第3章 煌帝国
紅玉が立ち去って二人きりになった後。
私はなんて声をかけたらいいのか分からなくて黙ったままだった。
静な部屋で立ち尽くす私と白龍さん。
さっきまでの賑やかさが嘘みたいで、今にも逃げ出したい気分だった。
「俺は……」
言葉を失っていると、俯いていた白龍さんが意を決したように顔を上げて。
それから私の方を向くと……
「すみません、さっきはその《俺の》だなんて言ってしまって」
と、申し訳なさそうに言ってきた。
予想外の言葉に驚いて――元はといえば勝手な理由で飛び出してきた私が悪いんだ。
それが分かってるから、慌てて謝った。
「うんん、悪いのは私の方だよ……せっかくご馳走してもらったのに飛び出したりして」
そこまで言ってから一呼吸おいて。
「だから私こそ心配させてごめんなさい」
申し訳なさから頭を下げる、私なりのけじめだった。
「謝らないで下さい……俺はその瑠花殿を責めたかったのではなくて」
俯いているから表情こそ見えないものの、たどたどしい口調と、焦った様な声音から白龍さんの気持ちが伝わってくる。
それが何だか可笑しくて笑いがこみ上げてきた。
「ふふっ」
笑いを堪えるのが難しくなって、吹き出してしまう。
「何笑ってるんですか! 俺は真面目に……」
「ごめんなさい、でも二人して謝ってるから可笑しくて」
どんどんこみ上げてくる笑いを押し殺すようにそう言うと、白龍さんはポカンとした表情をした後。
「言われてみればその通りですね」
と呟くように言って、その後は二人で笑いあった。